帰宅後そのまま置いたバッグの底が語っていた、気づかないふりをしていた日常の小さな乱れ

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そっと置かれているバッグ
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バッグの底を拭いたら、私の生活の雑さまで見えてしまった話

元気な女性

バッグの底には、誰にも見せていない私の一週間がついている

玄関でバッグを置いた瞬間、見なかったことにしていたもの

仕事から帰ってきて、玄関でパンプスを脱いだ瞬間、私はだいたい一度、バッグを床に置きます。

本当は置きたくないのです。

だって、バッグって外に持っていくものですし、電車の中、カフェの椅子、職場のロッカー、たまにトイレの荷物置き場、そういういろんな場所を一緒に移動している存在です。

それなのに帰宅すると、なぜか私はそのバッグを、まるで疲れた相棒みたいに玄関の端にぽすんと置いてしまいます。

そして、手を洗い、メイクを落とす前にスマホを見て、気づけば20分経っています。

「ああ、またやってる」

そう思いながらも、バッグはまだ玄関にいます。

きちんとした女性の部屋なら、帰宅した瞬間にバッグを専用の棚に置き、除菌シートで軽く拭き、明日の持ち物まで整えるのかもしれません。

でも、私の現実はそんなに美しくありません。

バッグの中には、折れたレシート、使いかけのリップ、なぜか2本あるボールペン、いつ入れたかわからない飴、そして「念のため」と言いながら一度も使っていないエコバッグが入っています。

そして今日、なぜか私はバッグの底を見てしまいました。

見なければよかったのに、見てしまったのです。

黒いバッグの底に、うっすら白っぽい線がついていました。

たぶん、どこかの床に擦れた跡です。

小さなホコリもついていました。

それを見た瞬間、私はなぜか自分の生活を見られた気がしました。

誰にも言っていない疲れ。

誰にも見せていない雑さ。

ちゃんとしているふりで乗り切っている毎日。

その全部が、バッグの底にくっついているように見えたのです。

今日は5月1日。

カレンダーの上では、ゴールデンウィークの途中にいる人もいれば、普通に仕事をしている人もいる日です。

明日は八十八夜で、新茶の季節が近づきます。

「夏も近づく」と言われる時期なのに、私の玄関には、春の疲れと初夏の湿気と、少しだけ放置されたバッグがありました。

なんだか、季節だけが先にきれいになっていくみたいです。

私はまだ、冬物のコートのクリーニングすら出せていないのに。

バッグの底を拭くという、地味すぎるセルフケア

正直に言うと、バッグの底を拭くなんて、ブログに書くようなことではないと思っていました。

もっと華やかなテーマはたくさんあります。

新作コスメ。

初夏のワンピース。

連休中に行きたいカフェ。

婚活で出会った人の話。

そういうもののほうが、たぶん読まれやすいです。

でも、30代になってから思うのです。

私たちの生活って、華やかなものよりも、こういう「誰にも見られない小さな部分」に本音が出るのではないでしょうか。

バッグの底を拭く。

たったそれだけなのに、なぜか少しだけ気持ちが整います。

除菌シートを一枚取り出して、バッグを裏返すほどではなく、底の角をそっと拭きます。

すると、白い跡が少し薄くなりました。

完璧にきれいにはなりません。

でも、それでいいのです。

私たちだって、完璧に整う日ばかりではありません。

寝不足のまま出勤する日もあります。

上司の何気ない一言を帰宅後まで引きずる日もあります。

婚活アプリの返信を開く気力がなくて、通知だけ見て閉じる日もあります。

コンビニで買ったサラダを食べながら、「私、野菜食べてるから偉い」と自分を励ます日もあります。

そんな毎日の中で、バッグの底を拭く時間は、地味だけど少しだけ自分を取り戻す時間でした。

誰かに褒められるわけではありません。

インスタに載せても映えません。

むしろ、載せたところで「え、そこ?」と思われるかもしれません。

でも、私は思いました。

こういう地味な場所を一つ整えると、心の中にあった小さな引っかかりが、ひとつだけ外れるのです。

部屋全体を片付けるのは大変です。

クローゼットを整理するのも気合いがいります。

家計簿をつけるのも、冷蔵庫の中を整えるのも、やろうと思うだけで少し疲れます。

でも、バッグの底なら30秒です。

30秒で、今日の私を少しだけ回収できます。

「私はちゃんとできていない」

ではなく、

「私は今日、バッグの底を拭いた」

それだけでいいのです。

令和の女性は忙しいです。

仕事も、家のことも、美容も、人間関係も、将来のことも、恋愛も、全部ほどほどに気にしながら生きています。

だからこそ、大きなリセットより、小さな回復が必要なのかもしれません。

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底が汚れるのは、ちゃんと外に出て生きている証拠

バッグの底が汚れていると、なんとなく自分がだらしないような気がします。

でも、本当にそうでしょうか。

バッグの底が汚れるのは、バッグがちゃんと外に出ていたからです。

通勤したから。

買い物したから。

誰かに会いに行ったから。

カフェでひと息ついたから。

病院に行ったから。

役所に行ったから。

重たい荷物を持って帰ってきたから。

バッグの底には、私が動いた証拠がついています。

それは、生活の汚れであり、生活の記録でもあります。

私はふと思いました。

きれいなままのバッグより、少しだけ擦れたバッグのほうが、今の私に似合っているのかもしれません。

新品のバッグを買った日、私はとても気分が上がります。

「このバッグを持つ私は、きっと素敵に暮らせる」

そんなふうに思います。

でも数週間経つと、バッグは普通に生活になじみます。

角が少し擦れ、持ち手に手の跡がつき、中にはレシートが入り、底には外の世界の跡がつきます。

それは少し残念なことのようで、実はとても自然なことです。

人間関係も似ています。

最初はきれいな距離感で始まっても、だんだん本音が見えたり、疲れが出たり、言い方に迷ったりします。

仕事もそうです。

入社したばかりの頃は「頑張ります」とまっすぐ言えたのに、年数が経つと、効率や空気や限界も覚えます。

恋愛もそうかもしれません。

最初は丁寧に返信していたのに、だんだん「この人と会うと疲れるかも」とか「優しいけど違うかも」とか、きれいごとだけでは進めなくなります。

バッグの底は、そんな現実の象徴みたいでした。

表から見れば、まだきれいです。

でも底を見ると、ちゃんと使ってきた跡があります。

それは恥ずかしいことではなく、むしろ私が今日までちゃんと生きてきた証拠なのだと思います。

八十八夜の頃は、霜の心配が少なくなり、季節が安定していく節目だといわれます。

私の心にも、そんな節目があってほしいです。

春のバタバタでついた疲れを、初夏の光の中で少しずつ拭いていく。

新茶を飲むみたいに、苦みも香りもまるごと味わう。

バッグの底を拭きながら、私はそんなことを考えていました。

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きれいにしたバッグから出てきた、思いがけない裏切り

バッグの底を拭いたあと、せっかくだから中身も少しだけ整理することにしました。

本当に少しだけです。

全部出して、分類して、収納ポーチをそろえて、などという美しい作業ではありません。

ただ、明らかにいらないレシートを抜く。

使っていない紙を捨てる。

リップを一本にする。

それくらいです。

すると、内ポケットの奥から、小さく折られた紙が出てきました。

私は一瞬、レシートだと思いました。

でも違いました。

それは、数か月前に行ったカフェのショップカードでした。

裏には、私の字でこう書いてありました。

「ここでブログを書く。未来の私へ」

完全に忘れていました。

そのカフェに行った日、私はたぶん、何かに疲れていたのだと思います。

でも、コーヒーを飲みながら、なぜか少しだけ前向きになって、ショップカードの裏にそんなことを書いたのです。

未来の私へ。

その言葉を見た瞬間、私は少し笑ってしまいました。

だって今日の私は、バッグの底の汚れを見て、生活の雑さに落ち込んでいたのです。

でも過去の私は、その同じバッグの中に、未来の私へのメモを入れていました。

つまり、このバッグは汚れを運んでいただけではなかったのです。

私の小さな希望も、ちゃんと運んでいたのです。

ここで、私は少し裏切られました。

バッグの底を拭く話だと思っていたのに、本当に拭かれたのはバッグではなく、私の自己嫌悪だったのです。

「私はだらしない」

「ちゃんとできていない」

「また放置してしまった」

そんな気持ちの下に、ちゃんと残っていました。

「書きたい」

「変わりたい」

「未来の私に渡したいものがある」

その気持ちが、バッグの奥でしわしわになりながら残っていたのです。

私はそのショップカードを、今度は財布の中に入れました。

きれいなポーチではなく、財布です。

よく見る場所に入れておきたかったからです。

そして、玄関に戻り、バッグをいつもの場所ではなく、棚の上に置きました。

たったそれだけなのに、少しだけ部屋の空気が変わった気がしました。

たぶん明日になったら、また私はバッグを玄関に置いてしまうかもしれません。

レシートもたまるかもしれません。

リップもまた増えるかもしれません。

でも、もうバッグの底を見るのが少し怖くなくなりました。

そこには汚れだけではなく、私が外に出て、働いて、迷って、笑って、ときどき自分を励ました跡があるからです。

きれいに暮らすことだけが、丁寧な暮らしではないのだと思います。

汚れた場所に気づいて、そっと拭いて、そこから小さな希望を見つけること。

それもきっと、30代の私たちに似合う、静かな丁寧さです。

バッグの底なんて、誰も見ません。

でも、誰も見ない場所を少しだけ大切にできた日は、自分のことも少しだけ大切にできた気がします。

そして今夜、私は新茶を買おうと思います。

未来の私へ。

今度はバッグの底ではなく、ちゃんと机の上に置いておくために。

そっと置かれているバッグ

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