夜職じゃないのにキャバスーツ通販を見続けた、洗濯物が乾かない夜の話

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夜11時、部屋着のままキャバスーツを見ていた私の話

スマホを見る女性

夜11時すぎ、洗濯機の終わった音が「ピー、ピー」って部屋に響いているのに、私はソファの上で膝を抱えたまま、スマホの画面を見ていました。
マグカップの底に少しだけ残ったぬるいお茶と、乾ききっていない前髪と、明日着る服をまだ決めていない自分。

検索していたのは、キャバドレス・キャバスーツの激安通販サイト「Ryuyu」。

いや、私、キャバ嬢じゃないんですけどね。
ここで自分に小さくツッコミ入れました。

でも、画面の中に並ぶキラキラしたドレスや、きゅっと体のラインをきれいに見せてくれそうなスーツを見ていたら、なんか急に、部屋着の毛玉まで見られている気がして、ひとりで少し背筋を伸ばしてしまいました。

「私には関係ない服」って決めつけていた夜

Ryuyuを開いた瞬間、正直ちょっとだけ照れました。

キャバドレス、キャバスーツって聞くと、私の中ではもっと遠い世界のものというか、夜の街でちゃんと自分を武装して働いている人たちのための服、というイメージがありました。

私は昼の職場で、無難なブラウスを着て、無難なパンツを履いて、無難な顔で「いらっしゃいませ」って言う側の人間なので、キラキラしたドレスを見ているだけで、なんとなく申し訳ないような、勝手に場違いな気持ちになってしまって。

でも画面をスクロールしていくと、想像していたよりずっと種類が多くて、ミニドレスだけじゃなくて、セットアップっぽいものや、ツイード系のスーツ、少しフォーマル寄りに見えるものまであって、あれ、これって夜のお仕事だけの服じゃないのかも、って少しだけ思いました。

女の人の服って、どこで着るかより、着たときに自分がどんな顔になるかのほうが、じわっと心に残る日があるんですよね。

会社に行く服でも、友達とランチに行く服でも、婚活の初対面で着る服でも、鏡の前で「あ、今日はまだいけるかも」って思えたら、その日はちょっとだけ声の出方まで変わる気がします。

あるあるなんですけど、別に誰にも褒められていないのに、服がうまく決まった朝だけ、駅までの道で信号に引っかかっても少し余裕があります。

逆に、服がなんか違う日は、コンビニのレジ袋を持つ姿まで妙に生活感が出てしまって、心の中で「今日の私、背景が全部グレー」って思うことがあります。

この感覚、人に言うほどではないけど、けっこう毎日に影響している気がします。

似合う服より、負けたくない日に着たい服

キャバスーツって、名前だけ聞くとすごく強そうです。

でもRyuyuのスーツを見ていたら、強いだけじゃなくて、ちゃんとかわいいものもあって、ちょっと悔しくなりました。

悔しいって変なんですけど。

普段の私は、「派手すぎるかな」「年齢的にどうかな」「これ着てどこ行くの?」みたいな言葉を、買う前から自分に投げがちです。

誰にも言われていないのに、勝手に審査員を心の中に五人くらい座らせてしまう感じ。

その審査員たちが、やれ丈が短い、やれ胸元がどう、やれ今さら感がある、って小声で言ってくるんです。

ほんと、うるさい。
家賃払ってないなら出ていってほしい。

でも、夜の世界の服って、そもそも「見られること」から逃げていない感じがして、そこに少しだけ羨ましさがありました。

私は仕事でも婚活でも、見られたいようで見られたくない、褒められたいようで期待されたくない、みたいな中途半端なところにずっといます。

プロフィール写真を選ぶときもそう。
盛れている写真を使いたいのに、盛れすぎて会ったときにがっかりされたらどうしよう、とか。

新しい服を着て行きたいのに、「気合い入ってる」って思われたら恥ずかしい、とか。

そのくせ、誰にも気づかれないと「まあ、そうだよね」って勝手に落ち込む。

めんどくさい女すぎて、たまに自分で自分に領収書を切りたくなります。

Ryuyuのキャバドレスやキャバスーツを見ている時間は、そんな自分の中途半端さを、ちょっとだけ笑える時間でもありました。

「私には関係ない」って閉じようとしたのに、指は普通に次のページを見ていて、黒のスーツ、白っぽいセットアップ、ちょっと甘いツイード、細く見えそうなライン、そういうものに目が止まって。

結局、服そのものより、「負けたくない日ってあるよね」という気持ちを見ていたのかもしれません。

激安って言葉に少し救われるときがある

眺める女性

激安通販って言葉、昔はちょっとだけ警戒していました。

安いものを選ぶ自分が、なんとなく雑に見える気がしていたんです。

でも一人暮らしをして、家賃を払って、水道光熱費を見て、スーパーで卵の値段に小さく反応する生活をしていると、安く買えるって、ちゃんと現実を生きている人の味方なんだなって感じるようになりました。

美容も服も、気持ちは欲しがるけど、財布は急に冷静です。

「かわいい」と思った3秒後に、「来月カード引き落とし大丈夫そ?」って別人格が出てきます。

あれ、本当に早い。
忍者より早い。

Ryuyuを見ていて、キャバドレスやキャバスーツって、もっと手が届かないものだと思っていたけれど、思っていたより選びやすい価格帯のものもあって、だからこそ画面を閉じられなかったのかもしれません。

高い服を一着だけ買って、汚さないように緊張して着る日もあるけれど、少し手が届きやすい服を選んで、気分を変えたい日に着るほうが、今の私には合っている時期もあります。

それに、ドレスって言葉がつくと急に特別な感じがするけれど、考えてみたら、私たちは毎日なんらかの衣装を着ている気がします。

職場ではちゃんとしている人の衣装。
友達の前では気を遣いすぎない人の衣装。
婚活では余裕がある女の衣装。
家では、毛玉のついたスウェットと、誰にも見せられない猫背。

どれが本当の自分かなんて、たぶん自分でもよくわからないです。

でも、たまに違う衣装を見てみると、「こういう私も、ないわけじゃないのかも」と思える瞬間があります。

この“ないわけじゃない”くらいの曖昧さが、私はけっこう好きです。

キラキラした服を見て、なぜか母のLINEを思い出した

ここで急に話が変わるんですけど。

Ryuyuのドレスを見ながら、私はなぜか母から来ていたLINEを思い出しました。

「最近ちゃんと食べてる?」っていう、短いメッセージ。

既読をつけたまま、返していませんでした。

キャバドレスと母のLINE、関係なさすぎて自分でも笑ったんですけど、画面の中のきれいな服を見ていたら、ふと、誰かに見せるためにきれいにすることと、自分を雑に扱わないことって、少しだけ近い場所にあるのかなって思ってしまって。

もちろん、ドレスを買えば人生が変わるとか、スーツを着れば自信が湧くとか、そんな単純な話ではないです。

むしろ私は、届いた服を試着して「思ってたんと違う」ってなる可能性もちゃんとあります。

鏡の前で、お腹を引っ込めながら無言になる未来も見えています。

それでも、夜11時の部屋で、洗濯物を干さずにスマホを見ている自分が、キラキラした服のページを閉じられなかった理由は、たぶん「誰かに選ばれたい」だけじゃなくて、「自分のことをまだ諦めていない」みたいな、ちょっと恥ずかしい気持ちが残っていたからかもしれません。

人に言うと重いので、ここでこっそり書きます。

婚活をしていると、選ぶ、選ばれる、条件、写真、メッセージ、会話の温度、返信の速さ、そういうものに心が細かく削られていく日があります。

でも服を見ている時間だけは、少なくとも私は自分で選ぶ側に戻れるんですよね。

黒にするか、白にするか。
ミニ丈は無理か、いや意外といけるのか。
スーツなら仕事っぽく見えるか、いや仕事に着ていくには攻めすぎか。

そんな小さな迷いが、なんだか久しぶりに楽しかったです。

で、ここからが自分でもちょっと意外だったんですけど。

私は結局、ドレスを買いませんでした。

買わないんかい、って話なんですけど。

カートには入れたんです。
ちゃんと入れました。
黒のキャバスーツを。

でも最後の購入ボタンの前で止まって、なぜか母にLINEを返しました。

「食べてるよ。今日は冷凍うどん」

たったそれだけ送って、スマホを置いて、洗濯物を干しました。

キャバスーツより先に、部屋干しのタオルを広げている私。
キラキラからの生活感、落差がすごい。

でもその夜、少しだけ気分が変わっていました。

買わなかったのに、画面の中で見た服が、私の背中の丸さをほんの少しだけ直してくれたような気がしました。

明日、同じ服を着て、同じ職場に行って、同じように「お疲れさまです」って言うだけかもしれないです。

でもたぶん、帰り道にまたRyuyuを開くと思います。

買うためなのか、迷うためなのか、自分でもまだわかりません。

ただ、夜の部屋で誰にも見せていない自分が、きれいな服を見て少し黙る時間は、思っていたより悪くなかったです。

そして今、干したばかりのタオルから柔軟剤の匂いがして、部屋の隅ではまだスマホの画面が少しだけ光っています。

その光を消すか、もう一回だけ見るかで、私はまた迷っています。

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