私たちは、眠るときまで「ちゃんとしなきゃ」を首にぶら下げている

外では蝉が鳴き始めているのに、部屋の中ではエアコンの風が首筋に当たり、身体だけが季節から置いていかれたように冷えています。
夜十一時を過ぎたワンルーム。
私はベッドの端に座り、両手で首を押さえていました。
痛いというほどではありません。
病院へ行くほどでもありません。
けれど、ずっと重いのです。
スマホを見すぎたからでしょうか。
パソコンに向かう時間が長かったからでしょうか。
婚活アプリで相手のプロフィールを読みながら、「この人は誠実そう」「でも返信が遅い」「私が気にしすぎなのかな」と、一人で勝手に疲れてしまったからでしょうか。
仕事中に笑顔を作ったこと。
言いたいことを飲み込んだこと。
スーパーで値上がりした野菜を見て、そっと棚へ戻したこと。
年収三百万円の生活で、欲しいものをすべて気軽に買えるわけではないこと。
そういう小さな緊張が、一日の終わりに首と肩へ集まっている気がしました。
私の肩には、バッグしか掛かっていないはずなのに。
どうしてこんなに重いのでしょう。
首と肩の違和感をどうにかしたくて、私は何度も枕を買い替えてきました。
ふわふわの枕。
低反発の枕。
ホテルのような大きな枕。
高さを変えられる枕。
けれど、新しい枕を買った夜ほど、私は期待しすぎて眠れませんでした。
「今夜こそ、ぐっすり眠れるかもしれない」
その期待が、かえって目を冴えさせるのです。
眠らなきゃ。
明日も仕事だから、早く眠らなきゃ。
せっかく枕を買ったのだから、気持ちよく眠らなきゃ。
気づけば私は、睡眠にまで成果を求めていました。
眠ることさえ上手にできない自分を、暗い部屋の中で責めていたのです。
そんな夜に見つけたのが、SurvaQ Storeの「首と肩がホッとする枕PLUS」でした。
最初に名前を見たときは、少しだけ笑ってしまいました。
「ホッとする」と、商品名にそこまで堂々と書いてしまうのか、と。
けれど同時に、その言葉から目が離せませんでした。
私が欲しかったのは、「正しい姿勢」や「理想的な睡眠」だけではなかったからです。
ただ、ホッとしたかったのです。
誰にも評価されず、返信を急かされず、明日の予定もいったん忘れて、首から上を何も考えない場所へ預けたかったのです。
枕を探していたはずなのに、本当に欲しかったのは「もう頑張らなくていい」という許可でした
公式サイトによると、「首と肩がホッとする枕PLUS」は、硬さと高さの異なる二種類の素材を組み合わせた独自形状の枕です。
首や肩を支えるだけでなく、グラフェンシートを使用した温熱機能が備わっており、蒸しタオルのような感覚で首まわりをじんわり温める設計になっています。頭側と首側の調整パッドを組み合わせることで、合計八十一通りの高さに調節できると案内されています。
枕の高さは、数センチ違うだけでも寝心地が変わります。
仰向けで眠るときは、顎が上がりすぎたり引かれすぎたりせず、首の自然なカーブを支えられる高さが大切です。横向きでは、肩幅があるぶん高さが必要になり、頭から背骨までがなるべく一直線になる状態が理想とされています。
説明を読めば読むほど、よく考えられた枕なのだと思いました。
それでも私は、購入画面を一度閉じました。
価格を見て、急に現実へ戻ったからです。
枕にこの金額を出すなら、美容院へ行けます。
少し良い化粧水も買えます。
婚活用のワンピースだって探せます。
友人とランチへ行けば、何回分になるのでしょう。
年収三百万円の私にとって、寝具は「壊れたら買い替えるもの」でした。
自分をいたわるために、まとまったお金を払うという発想が、なかなか持てなかったのです。
人に贈るプレゼントなら迷わないのに、自分のためとなると、途端に厳しい審査が始まります。
本当に必要ですか。
ぜいたくではないですか。
もっと安いもので代用できませんか。
来月でもよくないですか。
私は自分の買い物に対して、いつも小さな税務署のようになります。
レシートを一枚ずつ確認し、「あなたにこの出費は適切ですか」と問い詰めるのです。
でも、不思議でした。
飲み会で気を使って五千円払うことには、それほど悩みません。
疲れてコンビニへ寄り、必要のないお菓子や飲み物を買うこともあります。
会いたいかどうか分からない相手との食事に、新しい服を買うこともあります。
それなのに、自分が毎晩使うものには、なぜこんなにも罪悪感を持つのでしょう。
寝具を買うことは、華やかな自己投資ではありません。
誰かに見せても「かわいい」と褒められません。
SNSへ投稿しても、映えるとは限りません。
けれど一日は、朝のメイクから始まるのではありません。
前日の夜、どんな気持ちで横になれたかというところから、もう始まっているのだと思います。
朝から機嫌のいい人は、性格が明るいだけではないのかもしれません。
昨日の疲れを、昨日のうちに少し下ろせた人なのかもしれません。
私はずっと、起きている時間を改善しようとしてきました。
効率の良い働き方。
感じの良い話し方。
肌をきれいに見せる方法。
婚活で好印象を与える服。
けれど、誰にも見られていない睡眠の時間については、「眠れれば何でもいい」と後回しにしてきました。
それは、誰にも見えない自分のことを、私自身も見ようとしていなかったからかもしれません。
夏の夜に温かい枕なんて必要ないと思った私が、エアコンの下で首だけ冷えていた話
七月に温熱機能付きの枕。
文字だけを見ると、少し季節外れに感じます。
ただ、真夏の女性の身体は、私たちが思っているほど単純ではありません。
外へ出れば、肌に張りつくような暑さです。
電車へ乗れば、冷房の風が腕や首へ当たります。
職場では、誰かに合わせた温度設定の中で一日を過ごします。
帰宅すると、汗をかいた勢いでエアコンを強くし、そのままスマホを見ながら身体を冷やします。
足先は冷たいのに、顔だけ火照る。
肩は冷えているのに、背中には汗をかく。
夏なのに冷えているのか、暑いのか、自分でも分からなくなるのです。
ある夜、私はベッドの中でエアコンの風向きを変えながら、急に気づきました。
「私、暑さで眠れないんじゃなくて、緊張が抜けなくて眠れないのかもしれない」
暑ければ温度を下げればいい。
喉が渇けば水を飲めばいい。
でも、心がまだ仕事中のままだったら、部屋を何度にしても休めません。
首と肩を温めるという行為には、単なる温度以上の意味があるように思いました。
美容室で蒸しタオルを当ててもらったとき。
湯船で肩までお湯につかったとき。
温かい手で首筋を触れてもらったとき。
私たちは、温度だけでなく、「ここでは力を抜いていい」という合図を受け取っています。
「首と肩がホッとする枕PLUS」は、首まわりを温める機能に加え、揉み機能も備えた商品として紹介されています。公式販売ページでは、首と肩を約四十度で十五分間温める設計が案内されています。
とはいえ、すべての人に同じように合うわけではありません。
公式サイトに掲載された利用者の声にも、温かさや高さ調整を評価する感想がある一方で、形状や硬さに慣れるまで時間がかかった、揉み機能の音が気になった、高さが想像と違ったという内容があります。
ここは、きれいに隠したくないところです。
どれほど評判の良い枕でも、全員にとって正解になることはありません。
肩幅も違います。
首の長さも違います。
仰向けが好きな人も、横向きで丸くなって眠る人もいます。
硬めが安心する人もいれば、包まれるような柔らかさが好きな人もいます。
レビューの星が多いからといって、自分の首が多数決に従うわけではないのです。
だからこそ、八十一通りに高さを調整できる点には意味があるのだと思います。
最初から枕に身体を合わせるのではなく、少しずつ自分に合う位置を探していく。
面倒に感じるかもしれません。
けれど私は、その面倒さまで含めて、今の自分には必要なのかもしれないと思いました。
私たちは普段、人に合わせすぎています。
職場では空気に合わせます。
恋愛では相手の連絡頻度に合わせます。
友人との会話では、その場の温度に合わせます。
せめて眠るときくらい、枕のほうが私に合わせてくれてもいいのではないでしょうか。
低すぎれば足す。
高すぎれば抜く。
右と左で違和感があれば、それぞれ調整する。
「一般的にはこの高さです」と言われても、自分が苦しければ変えていい。
これは枕の話なのに、人生の練習のようでした。
自分に合わないものを、我慢して使い続けなくていい。
他人には快適でも、私には違うと言っていい。
一度決めたあとでも、何度でも調整していい。
三十代になると、人生の大きな部分は、もう変えられないような気持ちになることがあります。
仕事。
収入。
住んでいる場所。
結婚しているかどうか。
これまで積み重ねてきた選択。
でも、枕のパッド一枚なら抜けます。
首の角度を数ミリ変えることはできます。
ほんの少し呼吸しやすい場所を、自分の手で探せます。
大げさに聞こえるかもしれません。
けれど、疲れている夜に必要なのは、人生を百八十度変える決断ではありません。
明日の朝を、昨日より少し嫌いにならずに済む工夫なのだと思います。
私が本当に下ろすべきだったのは肩のこりではなく、「幸せそうに見せなければ」という力でした
ここまで書くと、この話は「少し高価な枕を買って、よく眠れるようになりました」で終わるように見えるかもしれません。
でも、そうではありません。
私が最後に驚いたのは、枕の温かさでも、細かな高さ調整でもありませんでした。
購入画面を何度も開いては閉じていたある夜、婚活中に知り合った男性からメッセージが届きました。
「今度の土曜日、会えませんか」
数日前までなら、私はすぐに返信していたと思います。
予定を確認し、服を考え、相手の好きそうなお店を調べ、「楽しみにしています」と感じよく返したはずです。
でも、その日は肩がひどく重く、何もしたくありませんでした。
正直に言えば、その人に会いたいのかどうかも分かりませんでした。
嫌いではありません。
悪い人でもありません。
ただ、一緒にいると少し疲れるのです。
相手の話に笑い、沈黙を埋め、帰宅後に「今日の私は感じが悪くなかっただろうか」と反省会をしてしまう相手でした。
私はベッドに横になり、首の下へ丸めたタオルを置きました。
まだ注文前だったので、そこに「首と肩がホッとする枕PLUS」はありません。
温熱機能もありません。
揉み機能もありません。
あるのは、使い古した枕と、適当に丸めたタオルだけです。
それなのに、その夜、首の下へタオルを入れた瞬間、私は泣いてしまいました。
身体が楽になったからではありません。
私がずっと、自分の違和感を無視してきたことに気づいたからです。
合わない枕を「まだ使えるから」と使い続けてきました。
気の進まない誘いを「せっかくだから」と受けてきました。
苦しい服を「細く見えるから」と着てきました。
乾燥する化粧品を「人気だから」と使ってきました。
疲れる人間関係を「大人だから」と続けてきました。
全部、同じでした。
合っていないのに、私が合わせればいいと思っていたのです。
私はスマホを開き、男性への返信を書き直しました。
「お誘いありがとうございます。今週はゆっくり休みたいので、今回は見送らせてください」
たったそれだけの文章です。
送信ボタンを押した瞬間、肩から何かが落ちました。
マッサージを受けたわけではありません。
温めたわけでもありません。
ただ、自分に合わない予定を一つ断っただけです。
そして、ここが自分でも予想していなかった結末なのですが、私はその夜、「首と肩がホッとする枕PLUS」を注文しませんでした。
商品が気に入らなかったからではありません。
むしろ、欲しい気持ちは強くなっていました。
ただ、勢いで買うことをやめたのです。
まずは自分の寝姿勢を確かめ、今の枕の高さをタオルで少しずつ調整してみることにしました。
自分は仰向けが多いのか。
横向きが多いのか。
首元を温めると落ち着くのか。
揉み機能の音があっても眠れそうか。
数日間、自分の身体を観察してから決めようと思いました。
以前の私なら、広告を見て心が動いた瞬間に買うか、値段を見て完全に諦めるか、その二択でした。
でも、本当に自分を大切にするというのは、「買うこと」でも「我慢すること」でもなかったのです。
自分の感覚を、面倒がらずに確かめることでした。
商品を買うかどうかより先に、私は私の首に尋ねる必要がありました。
どの高さなら苦しくないですか。
どの姿勢なら呼吸しやすいですか。
温めてほしいですか。
今日はもう、誰にも会いたくないですか。
身体はずっと答えていたのに、私は聞いていませんでした。
数日後、タオルでは微調整しにくいこと、朝になると位置がずれてしまうこと、首元を短時間温めると落ち着きやすいことが分かりました。
そのとき初めて、私は納得して購入を検討できました。
寂しさを埋めるためでもありません。
疲れた勢いでもありません。
評判が良いからでもありません。
「今の私には、この機能が必要かもしれない」と、自分の感覚を根拠に考えられたのです。
枕一つで、人生の問題がすべて解決することはありません。
肩こりや首の痛みにはさまざまな原因があり、強い痛みやしびれなどが続く場合は、寝具だけで何とかしようとせず、医療機関へ相談することも必要です。
けれど、夜ごと身体を預ける場所を見直すことはできます。
眠る直前まで頑張るのをやめる合図を、自分に用意することもできます。
七月の夜。
遠くで聞こえる蝉の声。
エアコンの低い音。
カーテンの隙間から入る、街灯の薄い明かり。
明日もきっと、完璧な一日にはなりません。
仕事で小さな失敗をするかもしれません。
好きな人から返信が来ないかもしれません。
鏡を見て、肌の調子にがっかりする朝もあると思います。
それでも夜になったら、首と肩を休ませてあげたいです。
今日一日、愛想よく振る舞ったこと。
言い返さずに耐えたこと。
不安を隠して働いたこと。
誰にも褒められなくても生活を回したこと。
その全部を支えていた首と肩に、もう頑張らなくていいと伝えたいです。
私たちは、眠る瞬間まで前向きでいなくていいのです。
反省しなくてもいい。
人生の答えを出さなくてもいい。
結婚できるかどうかも、収入が増えるかどうかも、明日の朝まで保留でいいのです。
温かい場所へ首を預け、目を閉じる。
それだけでいい夜があります。
私が探していたのは、人生を変えてくれる魔法の枕ではありませんでした。
誰にも見せていない私が、ようやく力を抜ける場所でした。
そして、その場所を選んでいいと自分に許可を出すことでした。
「ホッとする」というのは、身体の感覚だけではないのだと思います。
もう誰かに合わせなくていい。
今夜だけは、ちゃんとしていなくていい。
そう思えたとき、人は初めて、本当の意味で枕へ頭を預けられるのかもしれません。





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【参考サイト】
・CALQS公式サイト「首と肩がホッとする枕PLUS」
・SurvaQ Store公式販売ページ「首と肩がホッとする枕PLUS」
・CALQS公式サイト「商品レビュー」
・mybest「首・肩こり防止枕の選び方・比較記事」
【ブログ本文の文字数】
約6,300文字

