ホームレスの生活から見える現実と工夫


ホームレスという言葉を聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?
寂しくて、苦しくて、支援を必要としている、そんな漠然としたイメージがあるかもしれません。実際、私も少し前までそう思っていました。
最初にAさんが見せてくれたのは、アルミ缶や銅線が詰まったリュックでした。「これで今日は2,000円くらいになりますかね」と、穏やかな口調で話す姿が印象的でした。その後、彼がどのように収入を得ているのか、どのように生活しているのかを知るにつれて、彼の生活には驚くほどの知恵と工夫が詰まっていることに気づきました。
Aさんの収入源
Aさんの収入源は、一見地味に見えるけれど、とても重要なものです。アルミ缶や銅線、自転車の解体、さらには中古スマートフォンの売却など、多岐にわたります。
「スマートフォンは最近の稼ぎ頭ですね。一台で7000円になることもありますよ」とAさんは笑顔で教えてくれました。一方で、ノートパソコンの買い取り価格が下がっていることに少しがっかりしている様子も見えました。彼によれば、以前は1台3000円程度で売れていたノートパソコンが、現在では700円ほどに下がってしまったそうです。
さらに、Aさんは新しい収入源を模索中です。例えば、家庭で使わなくなったプリンターやキッチン家電の部品を取り出し、それらをまとめて売却することで、一度に3000円程度の収入を得ることがあると話していました。これらの作業は1日数時間にわたることもあり、効率的に作業するために必要な道具も揃えているとのことです。
また、Aさんはアルミ缶の収集についても独自の工夫をしています。特定の時間帯に回収すれば、量が多くなることを知っているため、朝早くや夜遅くに行動することが多いそうです。1日で約50〜100個のアルミ缶を集めることができ、それを1週間分ためて一度に売却することで安定した収入を得ています。このような日々の積み重ねが、Aさんの生活を支えているのです。


知恵を駆使した生活


Aさんの生活には無駄がありません。秋葉原で購入したソーラーパネルで毎日約6時間ほど発電を行い、蓄電池を使って夜間も電気を利用しています。この蓄電池は2年以上使っており、元を取ったと笑って話していました。また、カセットコンロでの自炊は1日に2〜3回行い、煮物やスープを中心に作ることが多いそうです。ガスボンベは1本を約1週間で使い切り、特売日にはまとめ買いをしてコストを抑えています。
水道は近くの水飲み場から1日に5リットル程度を汲んでくることで、飲料や調理に十分な量を確保しています。水を運ぶ際にはリサイクルした大きなペットボトルを活用しており、一度に多く運べるようにしています。これだけでも水道光熱費はゼロです。また、古着や不要になった日用品をリメイクして、例えばカバンや簡易な家具を自作するなど、必要なものを自分で作り出す創意工夫を行っています。リメイクしたものの一部は仲間内で交換することで、新しい用途を見つけることもあるそうです。
「出汁をとった鶏肉は捨ててしまいますが、その野菜スープが本当においしいんですよ」と彼が語る食生活には、健康への配慮も感じられます。肉を食べずに捨てるなんて、ある意味で贅沢に思えるほどです。さらに、地元の農家と直接交渉することで、規格外の野菜を格安で手に入れる方法を見つけたそうです。時には農家の手伝いをする代わりに、新鮮な野菜を分けてもらうこともあるとか。
最近では、余った食材を工夫して保存食を作るようにもなったとのことです。例えば、野菜の端切れを使って作るピクルスや、自家製のジャムが彼のお気に入りです。これにより食材を無駄にせず、少しの工夫で贅沢な気分を味わえるのだと語っていました。
Bさんの成功談
そんな中、もう一人のホームレスBさんの話も興味深いものでした。彼はなんと年収300万円近くを稼ぎ出しているとのこと。ごみ捨て場を回る時間や場所を慎重に選び、効率的に収入を得ています。
「裕福なエリアよりも、消費癖のある中流層のエリアが狙い目です。運が良ければ貴金属を拾うこともあります」とBさん。特にマンションのごみ捨て場を管理している人と親しくなるなど、人間関係の築き方にも彼の経験が生きています。マンションの管理人に頼んで回収時間を事前に教えてもらうこともあるそうで、これが稼ぎの効率をさらに上げる秘訣だと話していました。
さらに、Bさんは知り合いの紹介で一時的なアルバイトを得ることもあるそうです。例えば、地域イベントでの設営や清掃作業、あるいは倉庫内の仕分け作業など、多岐にわたる仕事をこなしています。中でも、清掃作業は得意分野で、短時間で効率よく作業を終える方法を身につけているといいます。
また、Bさんの工夫は収入の使い方にも及びます。得たお金は無駄遣いせず、生活必需品や仲間との交流費に使われます。彼の所持品には常に数冊の本が含まれており、自己啓発や知識を深めるための読書に時間を割いているとのことです。特に歴史や哲学に関する本を好んで読んでおり、それが彼の思考や行動に大きな影響を与えていると語ります。「知識を得ることも、大切な投資だと思っています。新しい視点を持つことが、自分の可能性を広げてくれるんです」と彼は力強く語りました。
さらに、Bさんは仲間たちとの交流を通じて得た情報を活用し、アルバイトや新しい収入源を模索しています。例えば、地元のイベントでのスタッフ業務や短期の清掃作業など、幅広い仕事に取り組んでいるとのことです。これにより、Bさんの生活はただ日々を生き抜くためだけでなく、将来の可能性を見据えた計画的なものとなっています。
Bさんはまた、食生活にも配慮しており、可能な限り栄養バランスの取れた食事を心がけているそうです。例えば、農家から直接購入した新鮮な野菜を使ってスープを作り、時には保存食としてピクルスや乾燥野菜も作るようになったと話します。このような取り組みが、彼の日々の健康と活力を支えているのです。
私の気づき


その生活ぶりは決して恵まれたものではないですが、そこに込められた工夫や努力には目を見張るものがあります。たとえば、Aさんがリサイクル素材を集めて収入を得たり、自給自足に近い形で生活を維持している姿には、ただただ感心するばかりでした。
もちろん、社会復帰を目指す支援がもっと充実してほしいと思いますが、彼らが今の状況でいかに工夫して生活しているかを見ると、私自身ももっと頑張らなきゃと感じます。また、Bさんのように、読書を通じて自己啓発を続ける努力には学ぶべき点が多いです。私たちが当たり前と思っている資源や時間をどう使うか、その重要性を改めて考えさせられました。
彼らの姿を見て、私たちが目を向けるべきなのは、支援の必要性だけでなく、個々の生活から学び取るヒントではないでしょうか。それが、社会の中で支え合う意識を育むきっかけになると感じています。
私の日常と重なる瞬間
ふと、自分の日常に目を向けました。毎日の仕事や婚活、家事の中で「無駄なこと」に時間やお金を使っていることに気づきました。AさんやBさんのように、もっと効率よく、自分のリソースを大切に使うことを考えなきゃなと。
例えば、私は最近ファストファッションを見直し、少し高くても長く使える洋服を選ぶようになりました。また、料理に関しても、余り物を活用したレシピを工夫することで、節約しつつ健康的な食事を心がけています。さらに、エネルギーの節約も意識するようになり、家では可能な限り自然光を利用したり、電化製品の使用を見直しています。休日には、物を買う代わりに図書館や公園で過ごすことも増え、心身ともにリフレッシュできる時間が取れるようになりました。
彼らの話から得たインスピレーションは、確実に私の生活を変えつつあります。特に、自分の生活に何が本当に必要で、何が贅沢なのかを考える習慣が身についたことは、大きな収穫だと感じています。
まとめ


ホームレスという厳しい現実の中で生活する彼らの知恵と努力には、学ぶべきことがたくさんあります。私たちが当たり前と思っていることの中に、無駄や気づかないありがたさが潜んでいるのかもしれません。これを機に、皆さんも自分の生活を見直してみませんか?例えば、日々の無駄遣いを減らすための具体的な方法を考えたり、身近な地域でホームレス支援に参加することができます。一歩を踏み出すことで、私たち自身もより豊かな生き方を実感できるはずです。
これを読んでくださった皆さんも、ぜひ自分の日常を少し見つめ直してみてください。そして、彼らが社会に復帰できる支援がさらに広がることを願っています。私たちの小さな意識の変化が、きっと大きな違いを生むのだと思います。