仕事帰りの特別な金曜日が私に教えてくれたこと

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ディナーを食べる女性
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花の金曜日、同僚との飲み会のはずが?

仕事をする女性

金曜日の夕方、仕事の終わりを告げるチャイムが鳴ると、オフィスには特有の高揚感が漂います。

「お疲れさまでした!」と席を立つ同僚たちに続き、私もバッグを肩にかけました。「お先に失礼しまーす!」と声をかけると、まだデスクに向かっている後輩が笑顔で手を振ってくれます。

仕事を終えたあとの開放感。普段なら真っ直ぐ帰宅してしまう私ですが、今日はちょっと違います。同僚のリカさんに誘われて、一緒にご飯に行くことになったのです。

仕事帰りに誰かと食事に行くのは久しぶりで、少し緊張しながらも期待が混じった気持ちを抱えていました。「たまにはこういう時間もいいかも」と思いながら、ちょっとした非日常感を楽しむ準備をしていました。

「どこ行く?」
リカさんと駅前で合流し、選択肢を挙げては悩む。金曜日の夜、飲み屋街はどこも混んでいて、人の波がちょっと苦手な私は少し気が引けます。それでも、彼女との会話を楽しみにしている自分がいることに気づきました。

駅前の賑わいの中、耳に入るのは笑い声や賑やかな音楽。普段なら気にならないのに、こうした音も今日はどこか楽しげに感じます。「こういう金曜日もたまにはいいな」とふと思う瞬間でした。

普段の生活では味わえない、少しだけ特別な時間。その気持ちは、ビストロに着いて席に案内されても続きます。リカさんとこんな風に話すのも久しぶりで、何を話そうかと少しワクワクしている自分がいました。


日常の中の小さな気づき

マリアージュ

結局、選んだのは静かな雰囲気のビストロ。席に案内され、注文した料理がテーブルに並ぶまでの時間、リカさんは仕事の話を軽く振ってくれました。

「最近、どう?婚活とかは?」
と聞かれると、ちょっとだけ胸がチクリとします。30歳、独身、婚活中。彼女は何気ない会話のつもりでも、私にとっては敏感な話題です。

「まぁ、ぼちぼちって感じかな」
笑顔を作りながら答えます。でも、その笑顔の裏では、少し苦い思いが広がっていました。

実際、先週も婚活アプリで知り合った人と会ったのですが、どこかしっくりこなくて、その場限りで終わりました。その帰り道、心の中にぽっかりと穴が開いたような感覚があったのを思い出します。

頭では「焦らなくてもいい」と分かっているのに、どこかで「30歳」という数字が重たくのしかかっている。自分に嘘をついていないか、そんな不安がふと頭をよぎります。

そのとき、店内の小さな音楽が耳に飛び込んできました。懐かしい曲。大学時代によく聴いていたアーティストの一曲です。自然と笑みがこぼれる瞬間、リカさんが気づいて言いました。

「これ、知ってるの?」
「うん、懐かしい。大学のとき、よく聴いてた曲なんだ」

リカさんは意外そうな顔をして、「そんな一面もあるんだ」と笑います。小さな会話の中で、自分の過去を誰かにシェアする楽しさを感じました。

さらに話は広がり、大学時代の思い出話に花が咲きます。初めての一人暮らし、友人たちとの旅行、夜通し語り明かした日々。そんな思い出を語るうちに、自分の人生には確かにたくさんの「楽しい」が詰まっていることを思い出しました。

インド風カレー

「そういえば、最近あの頃の友達とは会ってる?」
リカさんの問いかけに、一瞬言葉に詰まりました。社会人になってから、時間が経つのは本当に早く、大学の友人たちと過ごした時間が遠い昔のように感じることがあります。

「いや、なかなか会えてないかな。でも、実はつい最近、あの頃の写真を見返してたんだ。旅行のときの写真とか。」
そう答えると、リカさんが「どんな写真?」と興味津々に聞いてきます。そこで、スマホを取り出して、昔の写真を見せました。

「これ、大学の文化祭のとき。みんなで準備した屋台、大変だったけど楽しかったな。」
「すごい!なんか青春って感じ!」
リカさんの感想に少し照れながらも、写真に写る友人たちの笑顔を見ていると、当時の空気感が蘇るようでした。そのときの自分たちの会話や、笑い声まで思い出し、胸が少し熱くなるのを感じます。

「あのときのメンバーに会いたいな。」
そう口にした瞬間、自分の中に眠っていた思いが言葉になったようでした。

リカさんが「じゃあ次の休み、連絡してみたら?」と背中を押してくれたことで、その思いはさらに現実味を帯びてきました。


不意のトラブルから得たちょっとした感動

野菜サラダ

食事を終え、外に出ると冷たい夜風が頬を刺します。「寒いね」と肩をすくめるリカさんに同調しつつ、駅に向かって歩いていると、急に彼女がバッグをゴソゴソし始めました。

「あれ?ない!」

どうやら、店にスマホを置き忘れたようです。「先に行ってていいよ」と言われましたが、心配になり一緒に戻ることにしました。店のドアを開けると、ちょうど店員さんがスマホを持ってカウンターに立っているところでした。

「これ、お客様のですよね?」

その瞬間、リカさんの顔がパッと明るくなり、深く頭を下げました。私もつられて笑顔になりながら、「よかったね」と声をかけます。

店員さんに「気をつけて帰ってくださいね」と言われた瞬間、なんだか胸が温かくなりました。

その言葉に、不意に大学時代のある出来事が蘇りました。遅い時間までサークル活動をしていた帰り道、バス停で居眠りをしてしまった私に声をかけてくれた見知らぬ女性。彼女の「寒いから気をつけてね」という一言が、当時の疲れた心にどれだけ救いになったか思い出したのです。同じように、今日の店員さんの言葉も、日々の疲れを少しだけ癒してくれる小さな光のように感じました。

その帰り道、リカさんが言いました。
「こういうときに、人の優しさに気づくよね。なんか救われる気がする。」

たしかに、小さな親切だけど、こういう一瞬が私たちの日常を豊かにしてくれるのだと実感しました。リカさんもどこかホッとした表情を浮かべています。

途中、駅前のイルミネーションが目に入りました。季節が冬に変わりつつあることを感じながら、「またこんな時間を過ごしたいな」と心の中で思います。

その後も少し話しながら、冬の夜の冷たさを感じつつ、私たちは駅までゆっくりと歩きました。家路につく電車の中で、窓の外を流れる景色をぼんやり眺めながら、今日の出来事を静かに噛みしめます。


30歳、婚活中の私が得たもの

疲れている女性

家に帰り、ベッドに倒れ込む前にリビングのソファでひと息。今日一日を振り返りながら、ふと思いました。

婚活や仕事のことで悩む日々だけど、こういう小さなエピソードがあってこそ、毎日が特別になるんだと感じます。焦る気持ちを抱えながらも、目の前にある小さな幸せや感動を見逃さないこと。それが、私の「今」を豊かにする鍵なのかもしれません。

そして、自分の中にある「30歳独身」という肩書きに対するプレッシャーも、少しずつ和らぐような気がしました。周りと比べるより、自分のペースで歩んでいけばいい。

たとえば、先日同僚が「結婚してると大変なことも多いよ」と何気なく漏らした一言や、友人が「一人の時間をもっと楽しめる方法を探している」と話してくれたことが思い浮かびます。

こうした会話を通じて、結婚や人生のあり方に正解はないのだと気づかされました。そんなことを、リカさんとの会話や出来事から改めて学んだ金曜日の夜でした。

さらに、この日はリカさんとの友情を再確認する時間にもなりました。

同僚として、友人として、こうした何気ない時間を共有できる人がいることに感謝しています。仕事に追われる日々の中で、こうしたつながりが自分を支えてくれていると気づいたのです。

「次はもっと寒くなる前にどこか行こうね。」
リカさんと交わした約束が、心の中で小さな楽しみになっているのを感じました。小さな約束が、日々を少しだけ明るくしてくれるのです。

次の金曜日も、こんなふうに誰かと特別な時間を過ごせたらいいなと思います。新しい場所や、新しい会話。そんな期待が心を少し軽くしてくれるのでした。

カレンダーを見ながら、「今度は私がどこか誘ってみようかな」と小さくつぶやきます。その声は静かな部屋の中に溶け込みながらも、自分自身に向けた新しい前向きな一歩のような気がしました。

ディナーを食べる女性

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