「苦手」で終わらせないために、今日は“自分の声の音量”を1ミリ上げた話

今朝、カーテンの隙間から入ってきた光がやけに白くて、冬の朝ってどうしてこんなに「正しい顔」を要求してくるんだろう、と思いながら、私は台所でお湯を沸かしていました。
湯気の立つマグカップを両手で包むと、指先だけが少し生き返って、反対に心だけが置いていかれる感じがする。スマホの画面には通知が何件か並んでいて、仕事の連絡、宅配の不在票、そして昨夜マッチングアプリで「よかったら今度お茶しませんか?」と送ったメッセージの未読。
未読って、いつ見ても胸の中に小さな石を落とされるみたいで、私はそれをわざわざ拾い上げては「重さ」を確認してしまう癖があります。
男性が苦手、って言葉にすると簡単なのに、実際はもう少し厄介で、苦手な理由がひとつじゃないから余計にこじれるんですよね。
目を見て話せない、会話が途切れるのが怖い、真剣になりすぎて空回りする、変にいい子ぶってしまう、沈黙が来る前に自分で自分を追い詰める。
恋愛はしたい。素敵だと思える相手と、ちゃんと向き合ってみたい。でも、近づくほどに「うまくやらなきゃ」が先に立って、気づけば私は“自分のことを紹介する人”じゃなく、“自分をプレゼンする人”になってしまう。
そしてプレゼンって、だいたい失敗するんです。心がこもらないから。
今日は、そんな私が「今まであまり触れてこなかった自分の癖」――声の音量を無意識に下げるという行動を主軸に、苦手解消のプロセスを書いてみます。
男の人の前に立つと、なぜか声が小さくなる。自分でも気づかないくらい自然に。これって“緊張”より、もう少し根っこの深いところにある習慣なのかもしれない、と今日ふと思ったんです。
導入:駅のホームで、私はいつも呼吸を浅くする
午前中、少しだけ用事があって外に出ました。駅までの道は、昨日の雨が乾ききらず、アスファルトがまだところどころ濃い色をしていて、歩くたびに靴底が吸い付くような感触がしました。
改札前のコンビニでホットコーヒーを買って、手袋を外して小銭を出す。こういう動作が冬は地味に面倒で、私は毎回ちょっとだけイライラします。自分の生活が雑に見えるから。
それでも、カップの熱が掌に伝わる瞬間だけは、なんだか「今日もやってるな、私」って思えるから不思議です。
駅のホームに着いたら、電車待ちの列が少し詰まっていて、隣にスーツ姿の男性が並びました。年齢は私より少し上くらい。荷物は小さめのビジネスバッグ。香水はつけていないのに清潔感があって、こういう人が“普通に恋愛してる人”なんだろうな、って勝手に思ってしまう。
勝手に思って、勝手に緊張して、勝手に自分を萎縮させる。
我ながら、情緒が忙しい。
電車が遅延しているアナウンスが流れて、列が少し乱れました。私はぼんやりと案内表示を見上げていたら、バッグの取っ手が隣の男性のコートにちょっと引っかかってしまって。
「あ、ごめんなさい」
そう言った自分の声が、驚くほど小さくて、私はその瞬間、心臓がきゅっと縮むのを感じました。
相手はすぐに「大丈夫ですよ」と笑ってくれたのに、私は「すみません…」ともう一回言って、また声が小さくなって、さらに縮こまる。
声の音量が小さいだけで、私は自分の存在まで小さくしてしまうんだな、と、なぜかそこで気づいてしまいました。
私の中の“誰にも言わなかった本音”

家に帰ってから、私はその場面を何度も思い出しました。
「ごめんなさい」が小さい。
「すみません」がさらに小さい。
「大丈夫ですよ」って返してくれた相手の声のほうが、ずっと普通の音量で、普通の距離感で、普通の世界に属しているみたいだった。
ここで、誰にも言わなかった本音を書きますね。
あの瞬間、私は謝っていたんじゃなくて、“ここにいてごめんなさい”って言ってたんです。
そんなつもりはないのに、声の小ささが、私の中の「男性の前では目立ってはいけない」「嫌われないように、邪魔にならないように」という古い癖をそのまま形にしていた。
それが、なんだか悔しかった。
男性が苦手、って言うと、「過去に何かあったの?」って聞かれることがあります。
特別なトラウマがあるわけじゃない。たぶん。
でも、私は昔から、男の人の声の大きさとか、空間の取り方とか、正解っぽい振る舞いとか、そういうものの前に立つと、自然と自分を小さくしてしまう。
それは、怖いとか嫌いというより、“自分の輪郭が崩れる感じがして不安”なんだと思います。
だから話せない。目を見られない。真剣になりすぎる。
“ちゃんとしよう”が先に立って、自分の輪郭がさらに薄くなる。
そして、ここがいちばんやっかいなんだけど、私は恋愛をするときほど「私は大丈夫です」を演じたくなるんですよね。
本当は大丈夫じゃないのに。
弱いところを見せたら負け、って思ってるわけでもないのに、弱いところを見せるタイミングがわからない。
だから、相手に合わせて笑って、合わせてうなずいて、合わせて空気を読んで、帰り道に「私、何を話したんだっけ」ってなる。
これ、わかる人にはわかると思う。
会話って、終わったあとに自分の声が残るはずなのに、私の場合、残るのは疲労感だけ。
今日の出来事は、たったそれだけ。バッグが引っかかって謝っただけ。
でも、私はその小さな事故の中で、自分の“声の音量”が、私の苦手をそのまま表していることに気づいてしまった。
そして気づいてしまうと、戻れない。
目を逸らしたまま、苦手のままでいるほうが、たぶんラクだったのに。
“声”から始める、今日だけの小さな実験
苦手を解消するって、何か劇的なスキルを身につけることだと思っていました。
会話術とか、恋愛心理とか、相手のタイプ別攻略法とか。
でも、今日の私は、攻略法より先に、まず自分の“癖”を認める必要があるんだと思ったんです。
そして癖って、正面から叩き潰そうとすると反発が強いから、私は今日、すごく小さな実験をしてみました。
それは、自分の声の音量を「いつもより1ミリだけ上げる」という実験。
大声を出すとか、ハキハキ話すとか、そういう“別人”になるやつじゃなくて、ほんの少し。
自分が怖くならないギリギリの範囲で。
午後、宅配便が来たとき、私はインターホン越しに「はい」と言う声を、いつもよりほんの少しだけ大きくしてみました。
たったそれだけで、妙に恥ずかしかった。
誰も聞いてないのに、誰かに見られてるみたいで。
でも、その恥ずかしさって、私が今までどれだけ自分を小さく扱ってきたかの証拠みたいでもありました。
次に、近所のドラッグストアのレジで、店員さんに「袋いらないです」と言うとき、語尾を消さないようにしてみました。
「…です」までちゃんと音を出す。
これもすごく小さなことなのに、私は自分の中の“逃げ癖”がむずむずするのを感じました。
言い切るって、こんなに怖いんだ。
言い切るって、こんなに自分の輪郭がはっきりするんだ。
私は、輪郭がはっきりするのが怖かったんだな、とそこでまた気づいた。
ここで、苦手解消のプロセスって何かというと、私はこういうことだと思います。
いきなり男性と楽しく会話できるようになる、とかじゃなくて、まずは “自分が縮むポイント”を知ること。
そして、縮む瞬間に、いきなり伸びようとしないで、1ミリだけ抵抗してみること。
抵抗っていうと強そうだけど、実際は、音量を少し上げるとか、語尾を消さないとか、その程度でいい。
その程度でも、私の中ではちゃんと革命なんです。
男性が苦手な人って、相手の目を見られないとか、会話が続かないとか、そういう“表面の症状”に悩むと思うんだけど、私の場合、その根っこにあるのは「自分が小さくなりすぎる癖」でした。
だから今日の私は、男性の前でいきなり自分を変えようとしないで、まず日常の中で、自分の声を丁寧に扱うことにした。
そのほうが、なんだか嘘がない気がしたんです。
そしてもうひとつ、今日だけの違和感があります。
声を1ミリ上げたとき、私は「これってわがままなのかな」と一瞬思ってしまった。
誰にも迷惑かけてないのに。
普通に返事しただけなのに。
この“わがままに感じる感覚”が、たぶん私の苦手の正体の一部なんだと思います。
自分の存在感を出すこと=迷惑、みたいにどこかで思っている。
だから恋愛でも、相手に合わせすぎて、あとで空っぽになる。
この違和感に気づけたことが、今日はけっこう大きかった。
あなたは、どこで自分を小さくしてる?
夜、部屋の電気を少し暗めにして、ソファに沈み込みながら、私は朝のホームの場面をもう一度思い出しました。
あの男性が優しかったことより、私の声が小さかったことのほうが、今日はずっと引っかかっている。
恋愛って、相手を好きになる話でもあるけど、同じくらい「自分が自分をどう扱うか」の話でもあるんだな、と、今日の私は少しだけ思いました。
苦手を克服するって、たぶん“できるようになる”ことじゃなくて、苦手な自分を観察できるようになることから始まるのかもしれない。
観察できたら、1ミリだけ変えられる。
1ミリ変えられたら、次の日もまた1ミリ。
それって、派手じゃないし、ドラマにもならないけど、私はこういう地味な積み重ねのほうが信用できる。
もしあなたも、男性が苦手だけど恋愛はしたい、って思っているなら、いきなり目を見て話す練習とか、会話を盛り上げる技術とかより先に、今日のどこかで、自分が無意識に小さくなってる瞬間を探してみてほしい。
声の音量、語尾、姿勢、呼吸、笑い方、返事の仕方。
たぶん、あなたにも「ここで縮む」ポイントがある。
そしてそれに気づいた瞬間、きっとこう思うはずです。
「わかる…私、そこでいつも消えかけてる」って。
明日、もしまた誰かに「ごめんなさい」を言う場面があったら、私はそのときだけ、ほんの少しだけ、声を残してみようと思います。
消えないように。
自分の輪郭を、相手に預けすぎないように。
あなたは、どんなときに自分を小さくしていますか。
そして、その1ミリを上げるなら、どこから始めますか。







